SES事業の裏側 - 元マネージャーが語るフリーランスとの差額

# SES事業の裏側 - 元マネージャーが語るフリーランスとの差額

IT業界でキャリアを考える方にとって、SES(システムエンジニアリングサービス)という働き方は避けて通れない選択肢の一つです。私は長年SES企業でマネージャーとして働いてきた経験から、業界の実態とフリーランスとの収入差について、包み隠さずお伝えしたいと思います。

## SES事業の基本的な仕組み

SES事業とは、自社のエンジニアを顧客企業に派遣し、システム開発などの業務を行うビジネスモデルです。多くの場合、以下のような構造になっています。

1. 元請け企業(大手IT企業やSIer)
2. 一次請け企業(中規模SES企業)
3. 二次請け企業(小規模SES企業)
4. エンジニア(実際に作業する人材)

この多層構造の中で、上から下へと仕事が流れていく過程で、各層の企業がマージンを取っていきます。

## マージン率の実態

SES業界で最も気になるのは「マージン率」でしょう。私の経験では、一般的に以下のような相場がありました。

- 大手SES企業:20〜30%
- 中小SES企業:30〜40%
- 小規模SES企業:40〜50%

例えば、エンドクライアントが100万円で発注した案件が、最終的にエンジニアの手取りとして50万円程度になることも少なくありません。残りの50万円は「営業活動費」「社員教育費」「福利厚生費」などの名目で企業の利益になります。

## フリーランスとの収入差

一方、フリーランスとして働く場合はどうでしょうか。同じスキルレベルでも大きな収入差が生じます。

```
【月収例:Javaエンジニア(経験5年)の場合】
SES企業社員:40〜50万円
フリーランス:70〜90万円
```

この差は主に以下の要因から生まれます:

1. 企業マージンがない
2. 直接取引による単価交渉の自由度
3. 複数案件の同時進行が可能

ただし、フリーランスには「営業活動」「スキルアップ投資」「福利厚生の自己負担」など、自分で対応すべき課題も多いのが現実です。

## SES企業に所属するメリット

収入面ではフリーランスに劣るSES企業ですが、以下のようなメリットがあります:

- 安定した収入と雇用保険
- 営業不要で常に案件が供給される
- キャリアの初期段階での技術習得環境
- 健康保険や年金などの社会保障

特に、IT業界未経験者やキャリアチェンジを考えている方にとって、SES企業は重要な入口になります。

## SESからフリーランスへの移行タイミング

私の経験上、以下の条件が揃ったタイミングでフリーランスへの移行を検討すると良いでしょう:

1. 特定分野での専門性が確立している
2. 業界内の人脈が構築できている
3. 半年程度の生活防衛資金がある
4. 自己管理能力に自信がある

多くのエンジニアは3〜5年のSES経験を経てフリーランスへと移行していきます。

## まとめ

SES業界は、IT人材の需要と供給をつなぐ重要な役割を果たしています。一方で、多層構造によるマージンの問題は依然として存在し、エンジニア自身のキャリア選択に大きな影響を与えています。

自分のキャリアステージに合わせて、SES企業とフリーランス、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、最適な選択をしていただければと思います。

エンジニアとしての価値を高め、自分の市場価値に見合った対価を得るために、常にスキルアップを意識したキャリア構築を心がけましょう。

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